伝える情熱をカタチに!若きグラフィックデザイナーのリアルな働き方と本音

グラフィックデザイナー経験者へのインタビュー_本田さん

今回は、グラフィックデザイナーとして多様なクリエイティブ業務に携わってこられた本田さんにインタビュー。

大学でメディアを学び、子ども向け教育コンテンツ制作を夢見た彼女が、なぜグラフィックデザイナーの道を選んだのか。そして、未経験の業界で、社内外に向けた多彩な制作物を一人で手がける中で見えてきた、仕事のやりがいと乗り越えるべき壁とは何だったのでしょうか。

その熱意の源泉から、具体的な業務内容、働く中での葛藤と成長の軌跡まで、グラフィックデザイナーの仕事のリアルをじっくりと伺いました。

まずはグラフィックデザイナーとしての具体的なお仕事内容について教えていただけますか?

グラフィックデザイナー経験者へのインタビュー_本田さん

グラフィックデザイナーとして多岐に渡る業務を担当しています。例えば、新聞に掲載する広告の作成から、年に一度発行する会社案内のデザインなどですね。採用活動にも携わっていて、関連するパンフレットや資料については、企画の提案段階からデザイン制作、そして印刷会社への入稿と、最終的な印刷物の完成まで一貫して関わっています。

その他にも、自社のウェブサイトを制作する際にはディレクション業務を行ったり、社内で使う名刺のデザイン業務もこなしています。建設業の会社なのですが、業界の繋がりで同業他社さんの名刺を作成したり工事現場で掲示するスローガン、さらには建物の外壁デザインといった専門的なお仕事を手がけることもありました。

動画コンテンツの制作にも携わることがあり、AdobeのPremiereProやAfterEffectsといった専門的な編集ソフトも使用することもあります。

大学では映像やグラフィック、テレビやラジオといったオールドメディアの研究をずっとしていました。もともと、子ども向けの教育コンテンツを作りたいという思いが強くて、人に何かを知ってもらうこと、人のためになるものを作りたいという気持ちが根底にありましたね。

数あるお仕事の中でなぜグラフィックデザイナーの道を選ばれたのでしょうか?

グラフィックデザイナーという仕事に惹かれたのは、先ほどお話しした「人に何かを知ってもらう、人のためになるものを作りたい」という思いが大きいです。その原点を辿ると、子どもの頃の体験が大きいですね。

実は子どもの頃、NHKのEテレが大好きだったんです!具体的な番組名を出すと「ハッチポッチステーション」とか…(笑)。そこで耳にした音楽や、夕方のクラシック番組などは、大人になってからも自分より上の世代の方と話す際の共通の話題になったり、自分の世界を広げてくれるきっかけになりました。

そういった原体験から、自分も将来、次の世代の子どもたちに何か良い影響を残せるような仕事、教育的な要素のある分野に携わりたいと考えるようになったんです。

そして、大学でメディア研究を深める中で、企業の活動や理念を「伝える」ことで社会に貢献できるグラフィックデザイナーの仕事は、自分のやりたいことに繋がるのではないかと思いました。

実際に働いてみて入社前に抱いていたイメージとのギャップはありましたか?

グラフィックデザイナー経験者へのインタビュー_本田さん

そうですね…まず良い意味でのギャップとしては、自分のスキルや大学で学んできたことが、思った以上に周囲から評価していただけたことです。自分では「この程度の実力で大丈夫だろうか」と思っていた部分もあったのですが、デザインや映像編集など、専門的なスキルがない方からは「え、そんなことできるんですか?魔法みたい!」と驚かれることも多くて。

自分の持っている技術がダイレクトに人の役に立ったり、感謝されたりしたのは素直に嬉しかったですね。面接の際に持参したポートフォリオが採用の決め手になったと後から伺ったこともあり、学んできたことがすぐに活かせたのは幸運でした。

逆に、悪い意味でのギャップというか大変だったのは、想像以上に「体力勝負」で「泥臭い」面があったことです。専門職であるが故に、周りの人に業務内容や作業工数を理解してもらいにくい場面が多くありました。

例えば、「明日、客先に持っていく会社説明資料をパンフレットにして。中身も考えて」といった、かなりざっくりとした依頼が急に来ることもあります。それを1日で仕上げるとなると、どうしても残業して長時間労働でカバーするしかありません。

また、制作物に対する判断基準が、必ずしも明確なロジックだけではなく、上司の「感覚」による部分もあって、時間をかけて作ったものが一瞬で覆ることもありました。そこからまた作り直しになるのは、精神的にも体力的にもきつかったですね。

「良いものを作れば、それだけで評価されるだろう」という少し甘い考えがあったので、そこは大きなギャップでした。

グラフィックデザイナーの仕事で感じる最大のやりがいや楽しさは何でしょうか?

一番のやりがいは、やはり自分が手がけたクリエイティブについて、社内外の人から良い反応をいただけた時ですね。「あれ、良かったね」という一言が本当に嬉しいです

特に印象に残っているのは、採用イベントに参加した時のことです。自分がデザインしたパンフレットやブース装飾を見て、「これ、いいですね」「こんなこともできるんですね」と興味を持って話しかけてきてくれる学生さんがいて。自分の作ったものがきっかけで会社に興味を持ってもらえたことは、ものすごく達成感がありました。

また、社内で作成した名刺のデザインが好評で、それを見た同業他社の方から「うちの会社の名刺も全部新しくしてほしい」と依頼をいただいたこともあります。自分の仕事が評価され、さらに新しい仕事に繋がっていくのは、大きな喜びでした。

ほぼ一人で業務を担当しているので、企画から制作、効果測定まで一貫して関われています。大変なことも多いですが、その分、成果が出た時の喜びは大きいですし、周りからのフィードバックを元に「次はこうしてみよう」と新しいアイデアが生まれるのも楽しいですね。

反対にグラフィックデザイナーならではのきつさや大変だと感じる瞬間はどんなときですか?

グラフィックデザイナー経験者へのインタビュー_本田さん

常に相談できる相手が社内にいないのはかなりきついですね。新しいツールを使いたい、こういう表現をしたいと思っても、具体的な手順やノウハウをすぐに聞ける人がいない。そのため、一度自分の作業を止めて、一から調べて…という工程が頻繁に発生し、自分の力不足を痛感することも多いです

あと、その大変さや仕事の専門性を、同じ温度感で共有できる相手がいないのも、精神的には辛い部分があります。周りの方々が悪気なく言う「簡単なことして同じ給料をもらっているのか」といった雰囲気を感じてしまうこともあり、業務内容への理解を得る難しさは常に感じていますね。「お絵描きしているだけじゃないか」と思われてしまうのは、やはり悲しいです。

それから、扱える領域が広範囲にわたるからこそ、社内全体のスケジュールを把握し、調整しながら進めなければならない業務も多く、責任の重さを感じる場面もありました。

例えば、年末の挨拶回りで使用する会社カレンダーの制作では、印刷会社との連携や納期の調整がうまくいかず、ギリギリになってしまった経験があり、ヒヤリとしました。多くの部署が関わるものは、特にスケジュール管理が大変でしたね。

代表的な1日のスケジュールとお仕事中の時間の使い方について教えていただけますか?

  1. 8:00
    出勤
  2. 8:30
    上司とのミーティング・進捗確認
  3. 9:30
    ラフの作成
  4. 12:30
    昼食
  5. 13:30
    上司とのミーティング
  6. 14:00
    デザイン作業
  7. 17:00
    事務作業
  8. 18:30
    退勤

始業が朝8時と少し早めすでね。日によって業務内容は大きく変わるのですが、例えばパンフレット制作がメインの日だと、午前中はまず上司とのミーティングで前日の進捗確認や、その日の作業内容のすり合わせを行います。

その後、デザインのラフ案を作成し、お昼を挟んで、午後にもう一度上司と確認。方向性が固まったら、本格的なデザイン作業に入り、夕方までに印刷会社へ入稿するためのデータを作成します。

それと並行して、社内報の取材や原稿作成、必要な備品(営業用のパンフレットなど)の発注や各事業所への郵送手配といった庶務的な業務もこなしています。本当に一日があっという間ですね。

定時は17時なのですが、やはり制作の締め切り前などは残業することも多く、平均すると18時~19時くらいまで作業しています。どうしても終わらない時は、自宅に仕事を持ち帰って作業することも…残念ながら、その分の残業代は出ませんでしたけど(苦笑)。

グラフィックデザイナーに向いている人と向いていない人はそれぞれどのようなタイプだとお考えですか?

グラフィックデザイナーの仕事に「向いている人」は、大きく2つのタイプがあるかなと思います。

1つは、常に問題意識を持って仕事に取り組める人。ただクリエイティブを作成するだけでなく、何が課題で、どうすればもっと良く伝わるかを常に考え、新しい仕事や改善点を見つけていく能動的な姿勢が求められます。

もう1つは、アドリブ力や柔軟性がある人ですね。クリエイティブな制作物は、特に最終的な判断が人の感覚に左右されることが多いんです。

最初に提案したものがダメでも、すぐに気持ちを切り替えて「では、こちらの案はどうでしょう?」と代替案を出せたり、相手の意図を汲み取って的確な修正を加えられたりする対応力は非常に重要です。また、制作物の意図を論理的に説明できる力も求められます。

逆に向いていないかもと思う人は、少し厳しい言い方かもしれませんが、自我が強すぎる人でしょうか。もちろん、自分の作品やスキルに誇りを持つことは大切です。

でも、「自分のデザインが一番正しいんだ」と固執してしまい、周りの意見に耳を傾けられなかったり、なぜそのデザインにしたのかを客観的に説明できなかったりすると、仕事を進める上で難しさを感じるかもしれません。客観的な視点と柔軟な思考を持つことが大切だと思います

最後にこれからグラフィックデザイナーを目指そうと考えている方々へアドバイスをお願いします!

グラフィックデザイナー経験者へのインタビュー_本田さん

これからグラフィックデザイナーを目指す方にお伝えしたいのは、とにかく対応できるスキルの幅を広げておくことが、何よりも強みになるということです。今、AIが進化して、ある程度のレベルのグラフィックや動画は自動で作れるようになってきていますよね。

そんな時代だからこそ、「これしかできない」というのではなく、多様なツールを使いこなし、様々な表現ができる総合力が求められると思います。

そのためには、忙しくても何かを作り続けること、新しい技術や情報に触れ続けることをやめないでほしいです。常にアンテナを張って、社会のトレンドや効果的な発信方法などの情報を収集し、自分のスキルとして吸収していく姿勢が大切です。

地道な努力かもしれませんが、そうやって自分の引き出しを増やしていくことが、変化の速いグラフィックデザイナーの世界で活躍し続けるための鍵になると思います。

グラフィックデザイナーの仕事は大変なことも多いですが、自分の作ったものが誰かの心を動かしたり、会社の成長に繋がる瞬間に立ち会える非常にやりがいのある仕事です。ぜひ挑戦してみてください。