
今回は、コールセンターのオペレーターとしてご活躍中の池田さん(仮名)にインタビュー。大学卒業後、高待遇の販売代理店でキャリアをスタートさせ、一度は夢だったインテリア業界へ。
しかし、厳しい現実に直面し、再び顧客対応の世界へ戻ってきました。日々鳴り響く電話の向こう側で、彼が何を感じ、何を大切にしてきたのか。
専門知識が求められる現場での苦悩と、それでも感じられたやりがいとは。コールセンターのリアルな実態を、率直に語っていただきました。
目次
- 1 まずはコールセンターとしての具体的なお仕事内容について教えていただけますか?
- 2 数あるお仕事の中でなぜコールセンターの道を選ばれたのでしょうか?
- 3 実際に働いてみて入社前に抱いていたイメージとのギャップはありましたか?
- 4 コールセンターの仕事で感じる最大のやりがいや楽しさは何でしょうか?
- 5 反対にコールセンターならではのきつさや大変だと感じる瞬間はどんなときですか?
- 6 代表的な1日のスケジュールとお仕事中の時間の使い方について教えていただけますか?
- 7 コールセンターのお仕事に向いている人と向いていない人はそれぞれどのようなタイプだとお考えですか?
- 8 最後にこれからコールセンターを目指そうと考えている方々へアドバイスをお願いします!
まずはコールセンターとしての具体的なお仕事内容について教えていただけますか?
私が勤務しているのは証券会社のコールセンターです。一般的な口座開設の案内などをする部署ではなく、システム関連の問い合わせを専門に扱う少し特殊なチームで、私を含めて7名ほど在籍しています。
主な業務は、有料版のトレーディングツールに関するお問い合わせ対応です。お客様からは「このチャートの見方がわからない」とか、「ローソク足がこういう形だけど、今後の株価はどうなりそうか」といった、かなり専門的なご質問をいただきます。
もちろん、株価が上がるといった断定的なお答えはできないので、あくまでこの分析方法だと、こういうデータが出ていますという客観的な事実をお伝えする形になります。
また、一般の窓口で対応が難しい案件が回ってくることもあります。例えば、PC操作に不慣れなご高齢の方が、口頭での説明だけでは解決できない場合などですね。
私たちの部署では、お客様とPCの画面を共有しながら遠隔でご案内できるシステムがあるので、そういった専門的な対応も行っています。1件あたりの応対が長くなることも多く、1日の受電数は20件程度ですね。
数あるお仕事の中でなぜコールセンターの道を選ばれたのでしょうか?
大学卒業後は、大手携帯キャリアの販売代理店で2年ほど働いていました。お給料も良く、特に大きな不満はなかったのですが、もともと興味があったインテリアの仕事に挑戦したくて、一度転職したんです。
ただ、そのインテリアの仕事が夜勤が中心で体力的にかなり厳しく、お給料の面でも生活が苦しくなってしまって…。2ヶ月ほどで、改めて転職活動をすることになりました。
その際は、特にコールセンター業界に絞っていたわけではありません。安定したお給料がもらえることと、車で通勤できる範囲であることを条件に探していたところ、たまたま条件に合致したのが、今のコールセンターだったんです。
前職での顧客対応の経験も活かせそうだと思ったので、最終的に入社を決めました。なので、このコールセンターで働きたい!という強い意志があったというよりは、自分の条件に合うのが今の会社だった、という感じですね。
実際に働いてみて入社前に抱いていたイメージとのギャップはありましたか?
良い意味でのギャップで言うと、綺麗な女性が多かったことですね(笑)。フロアの7割くらいが女性で、皆さん華やかでした。仕事内容に関しては、私自身が前職で顧客対応の経験があったので、大きなギャップは感じませんでした。
ただ、もし顧客対応に関して未経験でこの仕事を始めていたら、かなり大変だったと思います。覚えるべきサービスの知識が膨大にありますし、それを学びながらリアルタイムでお客様の対応をするのは、かなりのストレスになるはずです。
むしろギャップを感じたのは、会社の姿勢に対してかもしれません。お客様が抱える問題を根本的に解決しようというよりは、その場しのぎの対応で終わらせようとする雰囲気が思ったより強くて…。
明確な改善策を提示するわけでもなく、とにかく会社の都合を優先しているような雰囲気なのは、少し残念でしたね。
コールセンターの仕事で感じる最大のやりがいや楽しさは何でしょうか?
やはり一番のやりがいは、お客様が抱えていた疑問を解決できて、最後にありがとうと感謝の言葉をいただけた時ですね。日々の業務では理不尽なことを言われることも少なくないので、心からのありがとうは本当に心に沁みます。
頻繁にあることではないですが、お客様から名指しで「池田さんでお願いします」とご指名をいただくこともあります。
証券会社のコールセンターは、一度用件が済むと再度電話をいただく機会が少ないです。なので、その中で自分の対応を覚えていて、信頼してくださるのは本当に嬉しいですね。自分の仕事が認められたと感じる瞬間です。
反対にコールセンターならではのきつさや大変だと感じる瞬間はどんなときですか?
皆さんの想像通りかもしれませんが、理不尽なクレームを言ってくるお客様への対応は、経験があるとはいえ精神的にきついものがあります。
中には人格否定のような心無い言葉を浴びせられることもあるので、コールセンターで働く場合はある程度覚悟しておいたほうがいいと思います。もちろん、そのようなお客様は少数ですが。
あと、これは会社によって異なる部分があると思いますが、評価制度と実際の業務内容が全く噛み合っていないのは辛いですね。私たちのチームは、1件の対応に時間がかかるのが当たり前なのですが、評価指標は一般的な問い合わせ窓口と同じコール数や応対時間なんですよ。
上司に対して、「応対時間が長くなってしまうがどうすれば良いか」と相談しても、返ってくるのは電話を途中で切れというアドバイスだけ。お客様の問題を根本的に解決するのではなく、ただ数字上の応対時間を短くしろ、と。それではお客様は満足しないですし、結局また同じ問題で電話をかけてくることになる。
当然、私たちのチームは目標を達成できず、傍から見れば全然電話を取らないと思われてしまうので、ほとんど評価されないことが多いです。
代表的な1日のスケジュールとお仕事中の時間の使い方について教えていただけますか?
- 8:30出勤
- 8:40受電対応
- 13:30昼食
- 14:30受電対応
- 17:30新人研修
- 19:30事務作業
勤務時間は、株式市場の取引時間に合わせています。ただし、市場が始まる9時よりも前からお客様からの電話が来るので、8時半には出社しています。
一日の流れは、出社してから退勤まで、基本的にお昼休憩以外はずっと電話応対です。すべての通話が録音されていて、応対件数や平均応対時間などの実績は自動で集計されるので、自分で報告書などを作成する業務は特にありません。
本当に、ひたすらお客様からの電話に出続けるのがメインの業務ですね。ただ、たまに新人研修を担当することもあります。その際は、自分の応対を新人さんに聞いてもらったり、逆に新人さんの応対を隣で聞きながら指導したり、といったこともしています。
コールセンターのお仕事に向いている人と向いていない人はそれぞれどのようなタイプだとお考えですか?
コールセンターの仕事に「向いている人」は、大きく2つのタイプがあるかなと思います。
1つは、お客様の言葉に対して感情的にならず、淡々と対応できる人。ある意味、自分をロボットだと思えるくらいに、感情の起伏を表に出さずに仕事ができる人は向いていると思います。
もう1つは、メンタルが強い人ですね。理不尽なことを言われても、それをいちいち深刻に受け止めず、言われて当たり前くらいに割り切れるタフさが必要だと思います。
逆に向いていないかもと思う人は、人に親切にしたいと思い詰めてしまう人。お客様のために、と感情移入しすぎると、会社の方針との間で自分が辛くなってしまうかもしれません。
あとは、人と会話をすること自体が好きな人。これは意外に思われるかもしれませんが、コールセンターの仕事は楽しいおしゃべりではなく、あくまで問題解決が目的です。効率と正確性が求められるので、純粋なコミュニケーションを楽しみたいという人にとっては、ギャップがあるかもしれません。
最後にこれからコールセンターを目指そうと考えている方々へアドバイスをお願いします!
コールセンターの仕事は、対人スキルの基礎を実践的に学ぶにはすごく良い環境だと思います。お客様への正しい言葉遣いや対応の仕方は、どの職種でも活かせる汎用的なスキルです。
仕事をしながら、社会人としての基礎をしっかり身につけられるのは大きなメリットですね。理不尽なことも経験しますが、それも人生経験の1つとして、後々プラスになると私は思っています。
1つだけアドバイスをするとすれば、もしコールセンターで働くことが決まったら、その会社が提供しているサービスについて、事前にできる限り勉強しておくことをおすすめします。
入社してから覚えるべきことは本当に膨大で、それを学びながら日々の電話応対もこなすのは、想像以上に大変です。少しでも事前に知識を入れておくだけで、入社後の負担が全く違ってくるはずですよ。