
今回は、自動車部品の製造オペレーターとしてご活躍された田中さんにインタビュー。専門学校でイラストの道を志すも挫折、フリーターを経て製造業の世界へ。
その道のりは、決して平坦ではなかったと言います。窯の熱風で軍手が燃えるほどの過酷な現場、それでも彼を支え、成長させたものとは何だったのでしょうか。
きっかけから、日々の業務、そしてこの仕事ならではのやりがいや厳しさ、乗り越えてきた経験まで、ものづくりの現場のリアルを語っていただきました!
目次
- 1 まずは製造オペレーターとしての具体的なお仕事内容について教えていただけますか?
- 2 数あるお仕事の中でなぜ製造オペレーターの道を選ばれたのでしょうか?
- 3 実際に働いてみて入社前に抱いていたイメージとのギャップはありましたか?
- 4 製造オペレーターの仕事で感じる最大のやりがいや楽しさは何でしょうか?
- 5 反対に製造オペレーターならではのきつさや大変だと感じる瞬間はどんなときですか?
- 6 代表的な1日のスケジュールとお仕事中の時間の使い方について教えていただけますか?
- 7 製造オペレーターに向いている人と向いていない人はそれぞれどのようなタイプだとお考えですか?
- 8 最後にこれから未経験で製造オペレーターを目指そうと考えている方々へアドバイスをお願いします!
まずは製造オペレーターとしての具体的なお仕事内容について教えていただけますか?
私がやっている業務は自動車ガラスの製造です。最初はリアガラスの製造を担当していて、その後フロントガラスの製造に移りました。
リアガラスっていわゆる強化ガラスで、割れると粉々になるタイプですね。 板ガラスに熱処理を加えて、硬くて割れにくいガラスにするんです。 フロントガラスはちょっと特殊で、薄い板ガラスの間にフィルムが挟まっているんですよ。 こちらは曲げ加工はするんですけど、強化ガラスではないんです。 事故の時に破片が飛び散らないように、フィルムでそうなっているんですね。
私の部署では、素材となる大きな板ガラスが別の部署でカットされた状態で運ばれてきて、それを熱をかけながら曲げて、車の窓の形に加工し、さらに強化処理(リアガラスの場合)を行う、という工程を担当しています。 フロントガラスの場合は、フィルムを挟み込むためにクリーンルームでの作業が必要になるのが大きな違いですね。
数あるお仕事の中でなぜ製造オペレーターの道を選ばれたのでしょうか?
専門学校を卒業してから2〜3年くらいフリーターをしていたんです。 さすがに親からもそろそろ定職に就いたらどうだとプレッシャーをかけられまして(苦笑)。
そんな時に、親が新聞で見つけてきたの求人を面接に行ってこいと勧められたのがきっかけです。 正直、最初は全然モチベーションがなくて、どうせ受からないだろうなくらいに思っていました。 SPIの試験とかも、一応軽くは勉強しましたけどね。
実は、専門学校ではイラストを学んでいたんです。 でも、周りのレベルの高さに圧倒されて、早々に挫折してしまって…。 だから、当時は特にこれがやりたい!という明確な目標もなかったんです。 他に特に受けていた会社もなかったので、縁あって採用していただいた今の会社で働くことに決めました。 もう、自分を必要としてくれているんだから行こう!という感じでしたね。 親の圧もありましたし(笑)。
実際に働いてみて入社前に抱いていたイメージとのギャップはありましたか?
良い意味でのギャップで言うと、大企業だったということもあり、給料面とか待遇面は思った以上に良かったですね。 残業代もちゃんと出ますし。家賃補助もあって、7万円くらい負担が減るのですごく助かりました。
悪い意味でのギャップというか、想像以上に大変だったのは、やっぱり体力面ですね。 これは本当にきついです。作業する場所が窯の近くだったので、とにかく暑いんですよ。 窯の内部は700℃とかになりますし、その熱風が隙間から漏れてくるので、普通に火傷することもありました。 軍手が熱風で燃えることもありましたからね。 香ばしい匂いがするなと思ったら軍手がチリチリ燃えてる、みたいな(苦笑)。
あと、汗の量が尋常じゃなくて、作業着が乾くと塩で真っ白になるんですよ。 人間って本当に汗に塩分が含まれてるんだなって実感しましたね。 夏場は特に地獄でした。 冬場はまだ多少マシでしたけど、それでも暑いです。
製造オペレーターの仕事で感じる最大のやりがいや楽しさは何でしょうか?
正直、毎日同じ工程で同じものを作ることが多いので、やりがいを見つけるのは難しかった部分もあります。 でも、やっぱり待遇が良かったのは大きなモチベーションになっていますね。 残業した分はきっちり満額出ていますし、頑張った分だけお給料として返ってくるという満足感はかなりあります。
あとは、過酷な環境だったので、メンタルはかなり鍛えられたと思います。 根性というか、忍耐力みたいなものは間違いなく身につきましたね。
日々の業務では、ただ作業をこなすだけじゃなくて、改善活動もやっていました。 例えば、クリーンルームで異物混入が起きないように工程を見直したり、作業効率を上げるためのアイデアを出して実行したり。 そういう改善提案がうまくいって、不良品率が下がったり、生産性が上がったりすると、やっぱり達成感はありましたね。
反対に製造オペレーターならではのきつさや大変だと感じる瞬間はどんなときですか?
一番きつかったのは、やっぱり三交代勤務ですね。 1週間ごとに朝番・中番・夜番と勤務時間が変わるんですが、体が慣れてきた頃にまた次のシフトに変わるので、生活リズムが全然整わないんですよ。
特に夜番は本当に眠くて…。検査工程なんかは、正直、寝ながら作業しているような時もありました。 ガラスが流れてくるのを目をつぶったまま手で確認して、OKボタンを押す、みたいな。 それで後から不良が見つかって上司にめちゃくちゃ怒られることもありましたね。 「ちゃんと見てたのか!」って。
あと、これは私だけじゃなくて若手全般に言えることかもしれませんが、きつい作業は若手に回ってくることが多かったですね。 先輩方は比較的楽な工程を担当していることが多かったように思います。
それから、大企業ならではというか、工場の体制に対するやるせなさみたいなものも感じることはありました。 若手が中心になって改善提案をしても、ベテランの方々があまり協力的でなかったりするんです。 新しいやり方を試そうとしても面倒くさいと言われたり、せっかく導入した改善策がいつの間にか元に戻っていたり…。 そういう時は、ちょっともどかしさを感じましたね。
代表的な1日のスケジュールとお仕事中の時間の使い方について教えていただけますか?
- 6:50出勤
- 7:00夜番との引き継ぎ
- 7:30ライン作業
- 10:30昼食
- 11:30ライン作業
- 15:00資料作成
- 16:10退勤
三交代制なので、朝番、中番、夜番で時間は変わりますが、基本的な流れは同じです。 例えば朝番だと、6時50分スタートで、実働は8時間10分です。
出社したらまず着替えて、交代の時の引き継ぎを10分くらい行います。 その後、それぞれの持ち場で作業開始です。 製造オペレーターなので、ラインに入っている同僚たちの休憩を順番に回していく必要があります。
ガラスの型式を交換するタイミングなど、ラインが止まっている時以外は休憩に入れないので、自分の休憩時間は日によってまちまちですね。 遅くなったり早くなったり、その辺の調整も仕事のうちです。
一通り休憩を回し終わったら、また自分の作業に戻って、終業時間まで作業を継続します。 最後にまた引き継ぎをして終わり、という感じですね。
改善活動やそのための資料作成などは、基本的に残業中にやっています。 やる人だけが残って、1〜2時間くらい作業していますね。 若手が中心でした。
製造オペレーターに向いている人と向いていない人はそれぞれどのようなタイプだとお考えですか?
まず向いている人で言うと、何よりもまず体力がある人ですね。 勤務体系も不規則ですし、作業環境も暑くて汗を大量にかくので、体力が基本です。
あとは、トラブルが起きても冷静に対応できるかってのも大事です。機械の故障とか、急な変更とか、イレギュラーなことってどうしても起こるので、そういう時にパニックにならずに落ち着いて対処できる人は頼りになります。
逆に向いていないと思うのは、やっぱり体力がない人ですね。これはもう、どうしようもない部分があるので…。それから、言われたことだけを何も考えずにやりたい、というタイプの人も向いてないと思います。
意外と頭を使う場面が多いので、流れ作業をやればいいっていう考えで入ると、イメージとのギャップが大きいと思います。
例えば、ガラスの曲がり具合を調整するために、温度や型位置、ラインスピードなどを細かく考えながら作業する必要があるんです。成果物から逆算して、どうすればうまくいくかをロジカルに考えられるかが大事ですね。
最後にこれから未経験で製造オペレーターを目指そうと考えている方々へアドバイスをお願いします!
製造業って、結構スタートラインがみんな一緒だと思うんです。 だから、今の時点で特にスキルや経験がないっていう人でも、十分に目指せる仕事だと思います。 未経験からキャリアをスタートする最初のステップとしては、いいんじゃないでしょうか。
一度製造業で経験を積むと、そこで培った対応力とか段取りの考え方とか、色々なものが他の製造業でも活かせると思うんです。 いわゆる潰しが効く職種の一つだと言えるかもしれません。
もちろん、長く続ければ続けるほど専門性も高まりますし、資格を取得してさらに専門的な道に進むことも可能です。 例えば、設備保全の知識を身につければ、電気工事士とか、そういった資格取得にも繋がりますからね。
ゼロから何かスキルを身につけたい、手に職をつけたいと考えている人にとっては、すごくいい選択肢になると思います。
ただ、繰り返しになりますけど、体力的にきつい仕事であることは覚悟しておいた方がいいです。 勤務体系も不規則ですし、作業環境も過酷な場合があります。
でも、会社によっては待遇も比較的良かったり、危険な作業に対する手当が出たりすることもありますし、何よりスキルが身につくという大きなメリットがあります。 今、何をするか迷っているとか、スキルはないけど何か始めたいと思っている人には、ぜひチャレンジしてみてほしいですね。